H29の活動
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平成29年度 オーストラリア演習体験記 ~前半~
平成29年度の国際食料流通演習にて実施されましたオーストラリア演習の体験記を
獣医学類の方が執筆してくださいました!
前半後半に分けて掲載させていただきます!
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今回、生命環境科学域の食生産科学副専攻の教育の一環としての国際食料流通演習で、
オーストラリアの食生産と食流通の現場の見学、および現地の大学の講義を受講する機会があった。
その内容について、以下にレポートしたい。
1.メルボルン大学での講義
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上の写真が、メルボルン大学構内に設置されていた獣医学、農学関係の案内看板で、
ここで植物分野と動物分野の両方にまたがる講義をいくつも受講した。
そのうちの二つの内容を以下に紹介したい。
1‐1 気候変動下での食品の品質
これからの農業には、気候変動のリスクがある。
パン小麦は、温暖化によって穀物の硬さ、含有タンパク質の量と品質が変化し、含まれる栄養分も少なくなってしまう。
それゆえ、微生物を用いて植物に与える鉄分を増やして、パンの質を改善できないかという研究をしているということであった。
ワインは、品種の混合の仕方、イースト菌、オーク樽の成分などによって独特のアロマが醸し出される。
シラーズワインの特徴は、そのスパイシーさであり、それを生み出すコショウ様香気成分であるRotundoneは、ブドウを寒い気候のもとで育てることで生み出される。地球の温暖化によって、この味が変質してしまうだろう。
このような、気候と生物の関係を明らかにする生物気候学Phenologyが、現在必要とされているとのことであった。
1‐2 抗菌剤の管理
オーストラリアの実情に合った動物への抗菌剤療法をどのように構築するかの説明があった。
抗菌剤への耐性菌をなるべく生まないように、大陸の外から病原菌を持ち込ませないように水際でストップすれば、使用量を減らせるという説明であった。
2.ブリスベンでの牛肉生産工場の見学
世界最大規模の牛肉生産工場であるブリスベン郊外のJBSディンモア工場を見学した。ここには、フィード・ロット(肥育場)が併設されており、12,000頭を飼育している。
その総敷地面積は106haで、大阪府立大学中百舌鳥キャンパスの500倍、甲子園球場の6,000倍もある。2,000人以上が働いており、一つの小都市の規模であった。イスラム教国向けに、すべての牛がハラルの手順にのっとり殺される。皮をむかれ、頭、足、内臓の順に衛生的に取り除かれていき、湯で洗浄される。一時的に保存されてから、肉が部位ごとにカッティングされ、箱詰めされ、出荷される。箱のパレット積み込み作業は、ロボットが全自動で行っていた。一日に3,400頭の牛が処理されていた。
オーストラリア以外の欧米の国々では、一般的に2,3頭の牛を処理してから刃物を洗浄するのに対し、ここでは、1頭ごとに必ず刃物の洗浄を行っていた。感染症の拡大を防ぐためにも、手間はかかるが大切なことだと感じた。
3.アデレード大学での講義その他
植物の育種について、特にオーツ麦という品種を、どのように広大な国土のオーストラリアの各地の気候条件に合わせて改良していくのかの説明を受けた。
特に、最近の重要な課題は、乾燥した環境にも耐えられる株を作り出すことであった。
植物工場では、いろいろな品種の掛け合わせをした小麦を、同じ条件で育て、成長具合を計測していた。それには、自動運転のベルトコンベヤー、3Dで植物の内部スキャンのできるカメラ等が用いられていた。
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後半へつづく!