代表者メッセージ

ご挨拶

最近、輸入食品の残留農薬や食品表示偽造など食の安全を脅かす多くの問題が表面化してきました。また、人間の生活の根幹をなす「食」についての十分な理解を促すために、「食育(様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること)」に関して食育基本法が制定され、「食育運動」が全国で展開され、「食」に対する国民の関心が大いに高まっています。

「食品」は大別して動物性及び植物性食品に分類できますが、これまで、本学を含め多くの高等教育機関では、動物と植物が互いに異なる生物学的性状を有することから、「食」教育に関してもそれぞれ独自の教育体系で行われてきました。しかしながら、農産物や畜産物が生産されてから消費者に至るまでの生産・流通・加工ルート(フードシステム)が複雑となった結果、最終食品に含まれる原材料が混在化し、その由来を正確に把握できなくなっています(フードチェインの不透明性)。このような中、食のトレーサビリテイーやフードマイレージの概念など、フードシステム全般における安全性の評価や衛生管理に関する教育が必要となっています。顕在化してきた「食」に関する社会問題に対応することは、現在行われている教育体系だけでは困難です。今後もグローバル化が進むフードシステムの中にあって、将来を見通す先見性と、社会情勢の変化に対する柔軟性を持ち、「食」に関する問題に迅速かつ適確に対応できる問題解決能力を備えた人材を養成する教育課程の構築が、社会に強く求められています。

この現状に対応するために大学がなすべき「食」教育は、動物性、植物性という食料の特異性を教授しながらも、同時に両者に関する深く幅広い知識を授けるものでなくてはならないと考えました。本副専攻では、動物、植物、それぞれを専門とする獣医学類と応用生命科学類植物バイオサイエンス課程が協調して、動物と植物の特性の相異点や類似点を理解させる教育と複雑なフードシステムを一体化して取扱う教育を行うことで、複雑化するに至った原因や背景因子を体験的に理解させ、最終的にフード・システム全体の成り立ちを隅々まで俯瞰する能力を身に付けた人材を養成することを目的としています。

本教育プログラムの達成目標は、応用動物科学と応用植物科学の融合を基盤に、畜産物と農産物の生産から消費までのプロセスおよび食料の循環を体系的教育課程で学習させることにより、食教育の充実と発展を図ることです。また、食品関連公的機関や産業に、「食」全般に関する知識・技術、および「食」に関するサイエンスコミュニケーション能力などを備えた、実践力かつ即戦力を持つ人材を輩出することです。本副専攻では、毎年20名の学生を養成します。